食事を見直す前に知っておきたい「あぶら」の話

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管理栄養士からのコラム

こんにちは、管理栄養士の矢村千紘です。秋を感じる季節となりました。スポーツの秋、という事で運動やダイエットに取り組む人は、あわせて食事についても考えていきましょう。今回は「あぶら」についてです!

 

体に「あぶら」は必要!

エネルギー源のひとつである「脂質」は、1g当たりのエネルギー量が他の炭水化物やたんぱく質よりも高いため、意識して控える人も多いと思います。しかし、あぶらはエネルギー源以外にも、体にとって重要な役割があります。

体を構成する脂質は主に、「中性脂肪」「リン脂質」「コレステロール」の3種類です。

中性脂肪

女性では体重の約25%を、体脂肪として蓄えています。体温の維持だけでなく、空腹時に体や各臓器を動かすエネルギー源として活躍します体重55kgの人では約13万kcal(67日分)も貯蔵されています。

食品中の脂質のほとんどが、グリセロールに脂肪酸が3つ付いた「トリグリセロール」です。このくっついている脂肪酸の種類によって、脂質の性質や生体内での働きが変わります例えば、常温で固体なのか液体なのか、酸化のしやすさ、炎症を起こすのか抑えるのか、エネルギーになりやすさ、等です。「どの油が良いのか?」というのが話題になるのはこのためですね。

 

リン脂質

細胞膜、脳神経組織の構成成分で、親水性も持ち合わせているため血液中で脂質を運ぶ役割もしています。代表的なものが「レシチン」です。

 

コレステロール

リン脂質と同じく、細胞膜や脳神経組織の構成成分の他に、ホルモンや胆汁酸の原材料となっています。

 

これらの脂質を食事として摂る事で、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の吸収を助けるという役割もあるため、極端に減らしすぎると、皮膚の乾燥や、血管・細胞膜が弱くなり出血や抵抗力の低下、ビタミン不足の可能性もあります。

摂りすぎるとカロリーオーバーによる体重増加につながりますが、減らしすぎは美容と健康のためにもお勧めしません。

 

 

1日どのくらい必要か?

適切な量とは、どの程度でしょうか。健康を維持・増進するためのエネルギー量・栄養素量の基準を示す「日本人の食事摂取基準(2020年)」では、脂質の目標量を総エネルギー量の20~30%以内としています。成人女性ですと1日あたり約45~65gです。

1食当たりの目安は15~20g前後となりますので、市販食品や外食の栄養成分表示を見る習慣にすると、普段の食事で自分が摂取している量が分かってきます。ぜひ確認してみてくださいね。

脂質は多種多様な食品に含まれているため、全てを栄養価計算して把握するのは大変困難です。自炊の場合は、脂質を多く含む食品を把握しておくと良いですよ。

 

食品(1回使用量) 脂質量 食品(1回使用量) 脂質量
調合油(大さじ1) 13g アボカド(75g) 14.0g
豚ばら肉(80g) 28.3g さば(100g) 16.8
豚ヒレ肉(80g) 2.3g イワシ(100g) 9.2g
鶏もも肉皮あり(80g) 11.4g たら(100g) 0.2g
鶏ささみ肉(80g) 0.6g カレイ(100g) 1.3g
ベーコン(20g) 7.8g ツナ缶(70g) 15.2g
納豆(40g) 4.0g 高脂肪アイスクリーム(120g) 14.4g

 

表の通り、同じカテゴリーの食品でも部位や種類によって脂質量は大きく変わります。

脂質を考える際のコツをご紹介します!

 

上手にとるコツは?

食事のバランスが大事と言われるのは、栄養素はチームで働くためです。そのためには「主食・主菜・野菜料理」を揃えると簡単に食事のバランスを整えることができ、脂質の把握にも役立ちます。

 

主食

ご飯にはほとんど脂質は含まれませんが、うどん、そばはご飯に比べると少し脂質が増えます。パン(特にクロワッサン)や中華麺、パスタは製麺の際に油脂を使うとこがあり、主食類の中では脂質が多くなる傾向にあります。

 

主菜

脂質量を大きく左右するのが主菜です。肉、魚、卵、大豆製品、乳製品に含まれる脂質量によって変わってきます。同じお肉でも部位によって脂質量が異なるので、脂の多い部位を使うときは、「蒸す」「茹でる」「煮る」といった調理法や、テフロン加工のフライパンを使うなど、油を使わない工夫がお勧めです

お魚は不飽和脂肪酸であるオメガ3系脂肪酸が豊富で様々な健康効果が分かってきていますが、酸化されやすいため、新鮮なものを使うと良いですよ。

 

野菜料理

低カロリーでヘルシーなイメージの「野菜料理」ですが、ドレッシングによって脂質が多くなることがあります。他の料理とのバランスをみて、味付けを決めると良いでしょう。例えば、主菜で油脂をあまり使っていない場合はオイルドレッシング、それ以外はノンオイル、レモン、塩などの味付けにする工夫があります。

 

食事のバランスを整えるにも、脂質を意識していくにも、まず大事なのは全体を把握することです。冒頭でもお伝えしたように脂肪酸の種類によって、働きが変わるため、「お肉ばっかり」「お魚ばっかり」「あの油ばっかり」とならないよう、今日はお肉、今日はお魚・・・など万遍なく選ぶことをお勧めします。食事写真や食事メモで記録してみると自分の傾向がわかりますので、ぜひ1週間だけでも試してみてくださいね!

 

 

参考文献:

「しっかり学べる!栄養学」ナツメ社

e-ヘルスネット「リン脂質」

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-039.html

「臨床栄養ディクショナリー」メディカ出版

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」第一出版

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